さて、前稿の続きですが、
法を守っていても事故が起きると書きました。
取り上げたいのは2007年に、妊婦が二階の窓から転落した事故です。
この書類送検された建築士、法を犯しているかというと微妙です。
そもそも建築基準法には手すりの設置義務はあっても強度指針はありませんから
竣工の検査を通しても何の問題もありません。
製造物責任を問うという点でも、築19年の建物ですから、
当然劣化部分もあるわけですし、メンテナンスがされていなくても
小規模なら賃貸経営できるという法的欠陥もあります。
(その点は、下宿などまで法で縛る社会もどうかと思いますが。)
もちろん、ビスが一気に取れたことやコスト削減の認識があったことなど
この建築士側の設計や監理に責任がないとは言えません。
ですが、私が怖いと思うのは、報道の中で
「窓用の手すりはベランダ用よりも強度が低いという」
「事故の手すりは他の手すりよりも外れやすい状態であった」
とされていることです。
すなわち、報道ソースは捜査側の発表でしょうが、ここを強調することで
警察も新聞も読者も「建築士が悪い」ということで決着して納得するのです。
メンテナンスの問題やコスト削減を強いる風潮は完全に忘れられてしまいます。
この大きさの窓用の手すりなら人がもたれることを想定していないわけはありません。
問題の手すりが一度交換されていたという話もあり、
もしそうならその時の監理は誰が行ったのでしょう。
やっぱり根本原因の追求を忘れているような気がします。
この事故は複合原因のような気がする不自然な報道なのです。
(続く)
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